
目次
キックオフとは
ラグビーにおけるキックオフとは、ゲームの開始時、後半戦開始時、トライ等の得点後の再開時に行われるドロップキックから始まるセットプレーのことを指します。
ちなみに、厳密に言えば、正式にキックオフというのは一番最初のゲーム開始時のみ。
他のキックは、試合再開のキックと言います。
試合開始時間のことを、「〇〇時にキックオフ」と言ったりするのと、同じ感覚ですね。
キックオフの先攻・後攻はコイントスで決める
試合開始時のキックオフの先攻後攻、つまりキックを蹴る側と受ける側は、レフリーと両キャプテン間で試合前に決めておきます。
練習試合などなら、じゃんけんなどで決めることもありますが、公式戦などの正式な場ではコイントスを行います。
表か裏かを予想し、勝ったチームがキックオフか開始時の陣地の好きな方を選ぶことができます。
後半開始時には陣地を交代し、前半とは反対のチームのキックオフで試合を再開します。
また、得点後のキックオフに関しては、得点を取られた側のキックで再開です。
陣地の選択権は重要
意外に思われるかもしれませんが、どちらかと言うとキックオフの権利よりも、陣地の選択権の方が人気です。
ラグビーは屋外で行うスポーツなので、風や日差しの影響を大きく受けるためです。
風が強い日には追い風か向かい風かでキックの飛距離が大きく変わりますし、太陽に向かって攻める場合、キックを蹴られた時にボールを見失う可能性もあるためです。
前半後半で陣地は入れ替わりますが、先に得点をしている方が試合の主導権を握れるため、先に有利な陣地を選ぶ場合が多いです。
とはいえ、相手は気まぐれな自然。
試合が始まったら急に風向きが変わって向かい風になった。後半になってやっと追い風になるかと思いきや、さらに風向きが変わって終始向かい風のゲームになった、なんてケースも。
あまり考えすぎるのもよくないかもしれませんね。
キックオフの流れ
大まかなキックオフの流れは以下のようになります。
- キック側の競りに行く選手はセンターラインに並ぶ
- 防御側は自陣10mラインより内側に布陣する
- キック側がドロップキックで防御側の10mラインより奥側に蹴り込んでゲーム開始
それぞれを簡単に見ていきましょう。
キック側の競りに行く選手はセンターラインに並ぶ
キック側のキッカー以外の選手は、ボールを競りに行ったり、キャッチした相手選手をディフェンスするためにキックと同時にプレッシャーをかけにいきます。
ただし、この時、キッカーがキックするよりも前に飛び出してしまうとオフサイドを取られてしまうので注意が必要です。
また、フルバックやウイングなどの選手は、相手が蹴り返してきた場合のキック処理のために自陣に残ることが多いです。
基本的には、FWとBKで左右に分かれ、FW側にドロップキックを蹴るのがセオリーです。
防御側は自陣10mラインより内側に布陣する
防御側の選手も、相手の布陣を見てFWとBKに分かれ、自陣の10mラインよりも内側に布陣します。
どこにキックを蹴られても誰かがいるよう、穴のないように選手を配置するのがポイントです。
また、相手選手のプレッシャーがきつくなる10mラインギリギリの位置には、長身のロックや当たり負けしないプロップやフッカーの選手を配置し、後方の広いスペースには、機動力のあるフランカーやナンバーエイトが並びます。
キック側がドロップキックで防御側の10mラインより奥側に蹴り込んでゲーム開始
お互いの準備が整ったことを確認し、レフリーが試合開始の笛を吹きます。
その笛の後、キッカーがドロップキックをしてゲームが開始・再開されます。
また、このキックは10mラインを超えなければなりません。一度10mを超えた位置でバウンドして戻ってくるのはOKですが、10mを超えない場合は失敗となります。(失敗した時の再開方法は後述)
キックオフの時のFWとBK
トライ取った後は、相手チームのFWがどっちに動くかで右か左か確認して声だしたり。
キャッチした後、そのままラックとかモールになることも多いから、FWが近くにいた方がマイボールも確保しやすいしな。
防御側やったら、キックされるまでは一応不意打ちでBKにキック蹴ってこうへんか警戒する。FWがキャッチしたら、いつも通り攻撃のラインをつくるっていう感じかな。
さて、キックオフの概要がわかったところで、ここからはキックオフの見どころやより専門的なところも見ていこ。
キックオフの攻防の見どころ
キックオフの攻防はラグビーの見どころのひとつ。
場合によっては、キックオフをキャッチした後、連続攻撃でトライを取りきったり、意表を付いたところにキックをしてボールを確保したりなど、試合の流れを変えることもあります。
どこに、どんなキックを蹴るのか、キャッチした側はどう展開するのか、キック側はどうプレッシャーをかけるのかなど、キックオフの戦術について詳しく見ていきましょう。
キックオフでよく使われる3種類のキックについて
まず、大きなポイントは、『どこに、どんなキックを蹴るのか』です。
一口にキックと言っても、高さ、飛距離、ゴロキックなど、種類は様々。
まずは、キックオフでよく使われる3種類のキックについて、それぞれの狙いと特徴を解説していきます。
高く深い位置へのキック
ドロップキックを高く蹴り上げ、相手陣の10mと22mラインの中間から22mライン手前くらいまでの位置に落とします。
こういったキックは、ボールが浮いている間にディフェンスラインを押し上げ、相手に深い位置でキャッチさせることで、敵陣深くでプレーしようというのが狙い。
タッチライン際を狙うことでキャッチ後の相手の選択肢を潰すことができ、また、キックの滞空時間が長いほど、ディフェンスでプレッシャーをかけやすくなります。この2点がキッカーの技術の見せ所ですね。
ただ、キックが相手陣22mに入らないように注意する必要があります。
直接相手がキャッチしたとしても、キックオフの場合はフェアキャッチ(マーク)はできませんが、直接タッチキックを蹴って陣地を押し返すことができるため、あまりプレッシャーがかけられないためです。
10mラインギリギリのボール
相手10mラインのギリギリに落ちるようなボールをキックします。
このようなキックでは、距離が短いため、味方のロックがボールを競り合うことができ、マイボールにできるチャンスが高くなります。
キックの滞空時間は長いほど良いですが、短い距離のためコントロールと高さの両立は難しいところ。
力加減を誤ると10mラインを超えなかったり、タッチラインを割ってしまい、失敗してしまいます。
10mラインギリギリに落ちるボールの処理は難しい
また、10mラインを超えていなくても防御側の選手が触ればプレーは継続となります。
10mラインギリギリに落下し、バウンド次第では10mを超えるという場合、そのボールを取るかどうかも防御側にとっては難しい選択になります。
なお、一度空中で10mラインを超えたボールが風で押し戻された時は、そのままプレー継続です。キックを押し戻すほどの風はそうそうないので、敵味方ともにプレーが切れたと勘違いして、棒立ちになってしまうこともあります。
ゴロ・ライナーのボール
上二つに比べると、使われる回数は少ないですが、ゴロのキックやライナーボールを蹴るという選択肢もあります。
ラグビーボールは不規則な回転をしますので、運次第ではありますが、相手のノックオンを誘ったり、味方の胸元に収まってマイボールになることも。
キャッチした後の展開
では、次にキックオフをキャッチした後の展開について解説します。
ここでは、キックを受ける側がキャッチしたと仮定します。
相手ディフェンスが近ければ、ラック、モールを作る
基本的に、相手のディフェンスが近ければ、すぐにヒットしてポイントを作ります。
余裕があれば素早くパスで展開
キャッチ後、相手ディフェンスと距離がある場合には、素早くパスで展開することもあります。
グラウンド中央付近までボールを運び、ナンバーエイトやセンターの選手が突破を試みる、ウイングまで一気に展開する、中央付近から相手陣へキックを蹴り込むなど、選択肢が豊富にあることが魅力です。
キャッチした選手がそのまま突破
キャッチした選手にパワーやスピードがある場合、そのまま相手ディフェンスを突破してしまうこともあります。
キックオフはディフェンス側が前に出てきているため、一度突破されると、一気に崩れてしまうことも多いです。
連続攻撃がテンポよく決まると、ノーホイッスルトライ(キックオフから一度もプレーが切れずにトライすること)に繋がることもあり、大いに盛り上がります。
その他の駆け引き
キックオフの基本的な駆け引きや展開は、上記の通りですが、その他の少し奇襲的な駆け引きについても軽く触れておきましょう。
相手の準備が整わない間に開始する
得点後のキックオフの場合、相手選手全員が相手陣10mラインに入っていれば、レフリーが試合再開の笛を吹きます。
相手選手が水分補給に時間をかけていたり会話をしていたりして、準備が不十分でもキック出来るので、タイミングによってはキック側が有利にゲームを進めることができます。
狙える機会はあまりありませんが、相手が油断している時には有効な手段です。
直前でFWとBKの位置を入れ替える
ドロップキックを蹴る直前、FWとBKの位置を入れ替えるという奇襲戦法があります。
相手の反応が遅れれば、BKが構えているところにFWが競りに行くことができるため、ロックの身長やキャッチ後のブレイクダウンを優勢に運べます。
相手が対応してきたとしても、通常よりも焦りが出るため、ミスにつながりやすくなります。
ただし、キッカーによってドロップキックの左右への蹴り分けには得意不得意があるため、こちらがミスをしないように注意が必要です。
キッカー正面やBK側へのキック
こちらも相手の不意を突いた戦法。
キッカー正面の一番近い場所が、防御側の配置の都合でぽっかりと空いていることがあります。
見極めが重要になりますが、最も近い位置にゴロキックなどを転がし、自分で確保に向かえばマイボールを狙えます。
また、キックは来ないと油断仕切っているBKに急にキックを蹴ると、対応できずにミスを誘えます。
事前に味方に伝えておけば、自分たちに有利な展開に持ち込むことも容易いでしょう。
キックオフの陣形
冒頭で少し触れましたが、キックオフの陣形について、特にキックが飛んでくることの多いFW側の陣形を詳しく解説します。
FWとBKは左右に分かれる

防御側の選手は、グラウンドの左右にFWとBKで別れて布陣するのが一般的です。
キック側の選手の移動を見て、どちらにFWがいるかを確認し、相手FWに合わせた方にFWの選手が移動します。
特に決まりはありませんが、身長の高い相手ロックと競り合ったり、キャッチ後の態勢が整わないうちにタックルを受けたりするので、体の大きなFWの方がキャッチに向いているんですね。
前線はロックとプロップのコンビで抑える

10mラインギリギリの地点は、身長の高いロックや機動力はないが体の強いプロップが務めます。
大学生や社会人の試合では、キャッチの際にプロップがロックの足やお尻を持って、より高い位置でキャッチできるようラインアウトのようにリフティングしてサポートすることもあります。
うまく決まれば、相手のロックでも全く届かない位置でキャッチが可能です。ただ、キックの落下地点をしっかり見極める力が必要になります。
後方は機動力のあるサードローがカバー

ロックやプロップの後方の広いスペースは、フランカーやナンバーエイトといったサードローがカバーします。
距離があるため、相手選手が競りに来る可能性が低いので高さは重要ではありません。高さよりも、キャッチした後、当たりに行くのか、タックルを躱すのか、パスするのか、といった状況判断ができる力が必要です。
また、ポイントになった後にボールを出す必要があるため、スクラムハーフもこの辺りの位置で控えています。
キックオフに関係する反則・不正なキック
キックオフに関連する反則は以下のようなものがあります。
反則名 | 反則内容 | 再開方法 |
---|---|---|
オフサイド | キッカーがキックするよりも前に、キッカーを追い越して走り出した場合、オフサイドとなってしまいます。ただし、キックオフの場合は再開方法がペナルティではなく、スクラムとなります。 | 防御側のスクラム |
アーリータックル | アーリータックルはキックをキャッチするためにジャンプしている選手が着地する前にタックルしてしまう反則。大変危険なプレーであるため、悪質と認められた場合にはシンビンなどの厳しい罰が与えられることも。 | 防御側ペナルティキック |
アーリーチャージ | ボールをまだキャッチしていない選手に対して、腕を掴んだり服を引っ張ったりして妨害をする行為(ボールを競り合う行為はOK)。 | 防御側ペナルティキック |
コラプシング | キックオフ後にできたモールをディフェンス側が故意に引き倒すとコラプシングという反則になります。 | ペナルティキックで再開 |
また、不正なキックが行われた時の再開方法は以下になります。
不正なキックの内容 | 再開方法 |
---|---|
ハーフウェイラインを超えた位置からキックをした | 防御側チームが以下から選択
|
キックが10mラインを超えなかった | 防御側チームが以下から選択
|
キックしたボールがバウンドせず直接タッチになった | 防御側チームが以下から選択 |
キックしたボールがプレイヤーに触らず相手側のインゴールに入って相手がグラウンディングした、もしくは、インゴールを通ってデッドになった | 防御側チームが以下から選択
|
キックオフと似ているドロップアウトってなに?
キックオフと似たプレーに『ドロップアウト』というプレーがあります。
通常プレー時に、攻撃側がキック等でインゴールに入れたボールを防御側プレーヤーがグラウンディングする、または、攻撃側プレーヤーがインゴールに持ち込んだボールがインゴール内でタッチラインかデッドボールラインを超えた場合に適用されます。
イメージとしては、22mラインから行うキックオフといった感じです。
ただし、開始する陣地の違いや22mラインまで防御側が前に出られるといった点で、キックオフとは違った駆け引きが存在します。
キックオフは声出しが大事!
自分が取ると思ったら声を出して、周りに伝える。
そしたら、お見合いもなくなるし、キャッチした後もちゃんとサポートしてもらえるやろ?
二人が同時に声を出したら、基本的に後ろの選手が優先やねん。
後ろの方が状況がよく見えてるし、走り込んでキャッチできたらスピードもつくしな。
少しでも自分かな、と思ったら、とにかく声を出す。
誰も声を出さずに、皆の中心にボールが着地するとか、たまにあるからなー。
ほんま、声は重要やわ。声の重要さがわかったとこで、次の解説行ってみよう!