『NoSide〜能西高校ラグビー部物語〜』 第1話「スピードなら誰にも負けねぇ!」


前回までのあらすじ

能西戸高校に入学した初日、陸上部の見学をしようとグラウンドに来た新入生『隼 英須』。
中学時代、100mで全国3位になった英須だったが、ラグビー部顧問熱田にラグビー部に入部させられそうになってしまう。

入部を拒否する英須だが、熱田に乗せられてラグビー部入部を賭けて勝負をすることになったのだったーーー。

第1話「スピードなら誰にも負けねぇ!」

熱田
うむ、我が部のジャージ、なかなか似合っているぞ
英須
うるせー。とっとと始めようぜ。
勝負って奴をよ
熱田
焦るな。
もうすぐ、相手が来る
???
・・・監督、来ました
英須
ウォ! びっくりした!!
(何だこの人、全然気配感じなかったんだが)
熱田
待っていたぞ、不動!
隼、こいつがお前の相手となる3年のFB(フルバック不動 堅太だ!
英須
お、おっす。よろしく
不動
・・・
英須
(暗ぇ〜、何だこの人。
目つきもちょー怖ぇし!)
熱田
不動、お前にはこの英須と勝負をしてもらう!
不動
・・・うす
英須
(そこ疑問とかねーのかよ。ほんと、何考えてんのかわかんねーな)
熱田
よし、ではルールを説明する。
勝負の内容は、ズバリ『1対1』だ!
英須
『1対1』?
熱田
そう! ラインで示した幅10mの範囲内でお前がボールを持って走る。
そして向こうのゴールラインを超えることができればお前の勝ちだ。
熱田
不動はこのラインで待機だ。
隼が中間ラインを超えたら自由に動いてディフェンスをしていい。
ただし、タックルはなし。ホールドのみだ。
1対1のルール解説
熱田
勝負は5回。
そのうち、一度でもお前が不動を抜ければお前の勝ち。
この入部届けはなかったことにしてやろう。
英須
5回? いや、流石にそれは楽勝だろ?
熱田
ほぉ、強気だな
英須
こんだけ幅がありゃ、ぶっちぎれるに決まって・・・
不動
おい、1年。
舐めてんのは・・・どっちだ
英須
へ?
不動
・・・監督

スッ(熱田に向けて指を1本立てる)

熱田
ほぅ!
おい、隼、不動が10回チャンスをやると言っているぞ!
まぁ、素人のお前にはいいハンデと言えるかもなぁ、はっはっは!

ピキッ

英須
3回だ・・・。
熱田
うん?
英須
3回で抜いてやるっつってんだよ。
それでダメならラグビーでも何でもやってやる。
熱田
ほぉ、男に二言はないな、隼!
英須
あぁ、当たり前だ!
英須
(確かに俺は素人かもしれねぇ。
けど、スピードなら絶対誰にも負けねぇ自信がある
ラグビーだか何だか知らねぇが、ド肝ぬいてやるぜ、先輩よぉ)

=========================

熱田
準備はいいな!
俺が笛を吹いたらスタートだ!
英須
おぉ!
不動
・・・うす
熱田
では、1本目! 『ピッ!!』
英須
おぉし!
不動
・・・!
英須
(よし、ボールを持って走るなんて初めてだが、邪魔にはならねぇ。 これなら行ける!)
英須
(この中間ラインを超えたら、あいつが動いて・・・
 ・・・来ない!?)
不動
・・・
英須
(何でじっとしてるんだ!? やる気がない!?
何でもいい! 端に行くと見せかけて、一気に反対側に方向転換して駆け抜ける!
1対1一本目
英須
(・・・よし、楽勝! ぶっちぎ・・・)

ガシッ!

英須
おわぁっ!
熱田
『ピピー』
それまで。不動の勝ち
英須
(なんだ? 全然動いてなかったのに、急に掴まれた?)
不動
・・・多少は早いな。だが、それだけだ。
英須
な、んだとぉ〜
英須
くそっ! 次だ次!!
熱田
(隼 英須、やはり早い!
だが、それだけでは不動は抜けんぞ)
=========================
英須
(何でだ、何で止められた?
あいつはずっと真ん中で待ってたはず・・・)
不動
・・・
英須
(そうか! だからか!
あいつは俺が最初に端に走っていっても反応しなかった。
そして、俺が中央に戻って来たところで初めて動いたんだ
英須
(ならどうする、どうすればあいつを抜ける?
動かない、動かない・・・、そうか!)
英須
(向こうが動かないんなら、こっちも動かなきゃいいんだ!
直前まで真っ直ぐ走って、あいつの目の前で方向転換して躱す!
これなら行ける!)
英須
よーし・・・
熱田
・・・準備はいいか?
英須
おぉ!
不動
・・・うす
熱田
では、2本目!
『ピッ!!』
英須
っしゃあ!
1対12本目
熱田
(ほぉ、左右への揺さぶりは諦めて正面から行くか
思い切りがいいな。だが・・・)
不動
・・・
英須
(よし、今回も動いて来ない!
ならここで右に・・・)
英須
(いや、ダメだ・・・!
こんなところで方向を変えたら端に追い詰められる!
なら、あの辺か!?)
不動
・・・
熱田
動かない相手を崩すのは難しいぞ。ステップも知らんのではなおさらな。)
英須
(くっ、ヤバイ、近づきすぎた!
早く方向転換を・・・)
熱田
(せっかくのスピードも方向転換するためにはブレーキを掛けざるを得ない。重心移動もバレバレ。)
熱田
(となれば、あとは簡単。ブレーキがかかり、次に方向転換をかけた初動に合わせて前に詰めれば・・・)

ガシッ!

英須
ぐっ!
熱田
『ピピー』
それまで。不動の勝ち
不動
・・・何度やっても同じだ
英須
くそっ!!
熱田
(確かに、今はまだ粗い。
だが、あのスピード。しなやかで柔軟な筋肉、天性のバネ。
俺の目に狂いはない! 隼 英須、お前は10年に一度の才能だ!
熱田
(ふっふっふ、必ずお前を手に入れて見せるぞ・・・)
英須
おい、おっさん! 次だ次!!
熱田
後が無いぞ、隼! 次でラストだ!
英須
わかってるっての!

=========================

英須
ふぅ〜〜〜。
英須
(落ち着け、俺。
さっきのはダメだった。何がダメって変に頭使おうとしたからだ)
不動
(スピードは相当のものだな・・・。
監督が執心するのもわかる)
英須
(そうだ、俺にはこの足がある。
自分の足を信じろ。俺は負けない。絶対に負けない)
不動
(だが、今はまだまだ。
体の動かし方、ステップの切り方、相手を抜く感覚。
全てが未熟。全くもって相手にならん)
英須
俺は、スピードなら誰にも負けねぇ!!
不動
俺を抜くのは三年早い!
熱田
両者、準備いいか?
英須
・・・おぉ!
不動
・・・うす
熱田
うむ、では3本目!
『ピッ!!』
英須
はぁっ!!
熱田
(・・・!!
また・・・)
不動
真っ直ぐだと!?
不動
(それでは、抜けんことがわからんか。
まぁいい。2本目と同じ結果にしてやる)
英須
(よし、ここ!)
1対13本目
熱田
さっきより、仕掛けが早い!
確かに、それならスピードは落ちないが・・・
不動
早すぎる!
それじゃ、端に詰めろと言ってるようなもんだ
英須
い、くっっぞーーー!!

ゾワッ

熱田
まさか、あそこから
不動
さらに加速しやがった!?
不動
おおぉっ!!
英須
俺は、スピードなら、誰にも、負けねぇーーーー!!!
不動
間に合わ、・・・クソがぁーーー!!
英須
おぉぉーーー!!!

・・・

熱田
『ピピー』
英須
いよぉっしゃぁぁ! 勝ったぁ!!
英須
どうだ! ブチ抜いてやったぜ、このやろー!!
熱田
不動の勝ち
英須
はーはっはっは、ざまぁーみやが・・・れ?
英須
おいおい、おっさん。
目がおかしいんじゃねぇのか? 俺が華麗に抜いただろうが
熱田
隼、お前が走った足跡をよく見てみろ
英須
足跡って・・・、あ!
熱田
そう、お前の右足がタッチラインを踏んでいる。
10mの範囲の外に出ているからお前の負けだ
英須
は・・・、いや、ライン上がアウトだなんて聞いてねーって!
しかもたった一歩って!ほとんど俺の勝ちだったろーが!
熱田
いや、不動はお前にラインを踏ませるように追い詰めていた。
そのライン上の一歩がなければお前は捕まっていたんだから、当然お前の負けだ。
英須
いや、けど。
不動
・・・言い訳か。見苦しい、な。
英須
・・・んの! たまに喋れば腹立つ先輩だなー、あんた!
熱田
約束通り、お前は今日からラグビー部だ!
いいな!
英須
だから、納得できねぇって! もう一回だ! もう一回!!
次こそ、完膚なきまでに抜き去ってやる・・・
???
すごーい! 君、新入部員?
英須
は?
???
さっきの凄かったね!
いきなり不動くんを抜いちゃうなんて!
英須
はぁ、いや、それほどでも
不動
・・・抜かれていない
由美
あ、ごめんね急に。
あたしは吉田 由美。ラグビー部のマネージャーの3年生です。
英須
は、隼 英須っす。
(なんだこの人、すげー美人。大人っぽい・・・)
由美
英須くんね! でも、ほんと凄いよ!
不動くんは、チームで一番ディフェンスがうまいのに!
入部初日で抜いちゃうなんて!
英須
い、いやーそれほどでもないっす!
まぁ、俺にかかればこのくらい、なんてことないっす
不動
・・・吉田、俺は抜かれていないぞ
由美
それほどでもあるよー!
英須くん、中学時代はどこかでラグビーやってたの?
英須
いや、中学は陸上部で! ラグビーは今日初めてっす!
由美
えー、ラグビー初めて!?
本当スゴいね、きっと才能あるんだよ!
英須
で、ですかねぇ!
由美
英須君みたいな子が入ってくれたら、花園も行けちゃうかも!
英須
え、あぁ! もうバッチリっす!
花園でもどこでも連れてっちゃいますよ!
(花園? 花が好きなのかー。女の子らしーなー)
由美
あ、もう入部届け書いた? まだなら取って来てあげようか?
英須
もちろん書いたっす!
ほらほら、しっかり書いてあそこの顧問の先生にも渡してるっす!
由美
わ、ほんとだ! じゃあ、今日から同じ部活だ!
よろしくね、期待の新人くん!
英須
はい、よろしくお願いします! 吉田先輩!!
由美
英須くんはいつからラグビーに興味もってたのー・・・
英須
それはですねー、いやもー生まれた時から体に流れる血がラグビーを欲して・・・
不動
・・・吉田、俺は抜かれていないからな

・・・・・

・・・・

・・・

熱田
・・・ふ、ふふ
熱田
ふふふ、ふはははは!
熱田
(想像以上だ! 隼 英須!)
熱田
(最後の1本、意図的にスピードに変化をつけたわけじゃない。 確かに、最初の2本と同じスピード、つまり、フルスピードだった)
熱田
(だが、奴はそのフルスピードの状態から、さらに加速した!あの2段階加速(ダブルアクセル)は常人では不可能・・・!)
熱田
(底知れぬポテンシャル・・・。10年どころではない、100年に一度の才能だ
熱田
ふっ、ふはははははは!
面白くなってきた!

勝負には納得行かなかったものの、美人の先輩マネージャー吉田 由美に釣られてラグビー部に入ることになった隼 英須!
期待の天才ラガーマンの物語が始まる、かもしれない・・・。

第2話「仮入部の1日」に続く

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